「機能性医学」とは What is Functional Medicine?
機能性医学(Functional Medicine)は、1990年にアメリカのジェフリー・ブランド(Jeffrey Bland)博士によって提唱された「最先端科学と医学を融合した、生活習慣病や慢性病の治療法」です。翌年には米国で機能性医学会が設立され、その後、多くの学者に支持、研究されてきました。ビル・クリントン(元アメリカ合衆国大統領)が選んだ次世代医療としても知られています。
クリントン元大統領の主治医であったディーン・オーニッシュの研究では、前立腺がん患者に3カ月間、運動、瞑想、健康食(地中海食)を実践させたところ、501のがん関連遺伝子の発現が改善。がんも生活習慣病のひとつであり、がんは生活習慣次第で予防も改善もできるということがわかってきました。
がんは無論、花粉症や食物アレルギー、アトピー、うつ病、頭痛、冷え症、ぜんそく、蕁麻疹、リウマチ、便秘、糖尿病などは、多くの人が悩む生活習慣病。学校へ行けない、仕事を休まなくてはならないというほどではないけれど、仕事や勉強の能率を著しく下げてしまうような病気が蔓延していることは、社会が抱える重大な問題です。
このような慢性病は、医者から処方された薬を飲み続けてもなかなか治りません。その結果ドクターショッピング(多数の病院、さまざまな科、主治医を転々と変えること)をし、時間もお金も使うことになります。しかし、「対症療法」でなく、その症状が出ている原因に目を向けて診断すると、その患者が良くない生活習慣を持っていたり、病気を呼ぶような生活環境にいることがわかります。
つまり機能性医学とは、生活習慣病や慢性病に対し、できるだけ治療薬に頼ることなく、発症原因に着目して予防と根本治療を目指す、十人十色の個体差を考慮した医学と言えます。
「病気はこれまで積み重ねた生活の結果であり、根本的な解決のためには発症プロセスへの洞察と対策が必要である」というのが機能性医学の考え方。健康状態を司るライフスタイル要素は、どれも本人の努力で改善できるものです。
1 栄養
精製糖や白い穀物を控え、良質のたんぱく質・脂質をしっかり摂り、ビタミン・ミネラル、水素やレスベラトロールなどの機能性栄養素を適切に摂取すること。栄養所量を満たすだけでは、最適な健康状態を維持できない。また、腸内フローラに対する栄養(第4の栄養)である水溶性食物繊維も重要。
2 ストレスと対処力
置かれている状況を把握したうえで、適切に対処する。時にはストレスを味方にするようなものの考え方をすること (認知行動の変容)。フィジカルなストレス、メンタルなストレス、いずれも内分泌を介して身体のダメージにつながり、恒常性破綻の原因となる。
3 運動と活動
30分~1時間ほどの速歩や、自宅で行える簡単な筋トレを取り入れること。メタボもロコモも防げ、認知症リスク、がんによる死亡リスクが下げられる 。また、近年は “HIIT”(高強度インターバルトレーニング)が短時間で長時間の持久運動と同等以上の効果があることで注目されている。
4 睡眠と休息
日光やブルーライト、カフェインをコントロールし、体内時計を整えながら睡眠時間や質を確保する。適切な休息で自律神経を整え、コントロールし、疾病リスク、死亡リスクを下げる。睡眠時無呼吸症候群などにも対処。
5 家族と社会的つながり
レジャーや運動などを介し、家族は無論、人とのつながりを増やすことが、それぞれの慢性疾患のリスクを軽減する。社会的関係性の貧困は、喫煙同等以上のリスク因子である。